月夜見 “どっちも大事”

         〜大川の向こう

 
大人たちがああもうこんな時期と口々に言っての忙しがる、
そんな師走がやって来て。

 「でもな、
  ほんとーにいそがし―のはマキノだけなんだな。」

そりゃあさ、年末だから荷の搬送のちゅーもんも多くてさ、
だもんだから、廻す船の便数も増えてっし、
シャンクスやベンも、ヤソップやルウも、
随分遅くまで帰ってこなかったり、
飯食いに帰って来てても
引っ切り無しにケータイに呼ばれたりしてっけど、と。
おちびさんの目線からの観察が、
そんなつもりはなくとも、大人たちの忙しさを語ってもおり。

 『おおそうか。寂しい目に遭わせてすまんな。』

構ってやれないから詰まんないだろうなと、
愛しい坊やへすまないねぇとのお言葉を書ける赤髪のお父さんだが、

 『?? 全然だいじょーぶだぞ?』

そりゃあ時々は退屈じゃああっけどさ、俺も毎日忙しいからよ、と。
そりゃあドライに切り替えされちゃあ、

 『…そうかそうか、
  お前は父ちゃんよりも緑頭のガキ大将がいればいいんだな。』

 『おおっ。…って、なんで判ったんだ?』

あれれぇ?と不思議がられるばっかりで、
結構ハートにぐさりと来ている傷心へは、
やはり気づいてもらえぬところが不憫だったらありゃしない。

  そしてそして、当の坊っちゃんはといや

 「なあなあゾロ、さっかとじゅーどーとどっち見る?」
 「俺は柔道かな。」

そか、と。
納得したようなお声で応じはしたものの、

 「あのな、でもな、今日のさっかはな。
  世界一を決める試合なんだと。」

ガッコでみんなが言ってたし、
ベンとかシャッキーとかは、そっち見るってゆってたんだ。
…と、サッカーの中継も捨てがたいと未練はあるらしく。だが、

 「それを言うなら、
  柔道もスケートも世界一を決める大会のツアーなんだぜ?」

 「スケート!」

そか、それもあったんだと、
黒髪を小さなお手手でもしゃもしゃかき回し、
くあ〜〜っと唸り出したのは、

 「マキノが ヒギアスケート大好きなんだ。」
 「…フィギュア、な。」

さりげなく訂正してやるいがぐり頭のお兄ちゃんへ、

 「いっそ、
  1個のテレビで3つまとめて見れればいんだのにな。」

ちゅーけーで良くあるじゃん、
スタジオの何とかさんて呼んだらサ、
しゅーごー写真の休みの人みたいに、小さい画面が隅っこに出るやつ。

 「ビデオに撮っとくってのは…。」
 「そんなん だいごみがなくなるもん。」

スポーツっての、は始まりから終りまで
しゅーちゅーして見るから意味があるんだぞ?
結果だけでいいんなら、次の日のニュースでいうじゃんか、と。
一丁前に腕を組み、う〜んう〜んどうしたもんかと、
悩んでおいでの坊っちゃんで。
1つのチャンネルに子画面を貼れるテレビもなくなはいとか、
ケータイや、浴室用の小さいワンセグテレビを
同時に観りゃあいいのにとか。
小さいお兄さんなりの考えもありはしたものの、

 「う〜ん、どうしよっかなぁ。」

まるで小さい子犬がひょ小ひょこと小首をかしげるように、
どこまで真剣にか首を傾げて悩むご様子があんまり可愛いものだから。

 “…ま・いっか。”

もちょっと見てようか、なんて、
大人みたいな余裕を胸に秘めつつ、
じきに始まる柔道の世界大会、何なら諦めたっていいんだがと
そんな心積もりをしていた、小さな剣豪のお兄さんでした。





  〜Fine〜  11.12.11.


  *何のことなやらなお話ですいません。
   でもでも、どれを見ようかと迷ったのは事実でして。
   サッカーはまだ決勝ではないけれど、
   だからこそ見逃せんと思ったし。(ちょー失礼)
   そしてわたくし、まだ年賀状を刷ってません。
   しっかりしろ、大人
(笑)

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